帯電防止・制電加工【antistatic finish】
帯電防止・制電加工【antistatic finish】とは、生地の摩擦で起こる静電気の発生を防止する加工のこと。含有水分の少ない合成繊維の製品に静電気が発生しやすくなる。そのため、市販されている静電気防止スプレーの界面活性剤や洗濯柔軟剤に含まれる成分を生地に付与することで制電加工生地をを作る。
成分中には水になじみやすい親水基と油になじみやすい疎水基がくっついた形状となっていて、疎水基が生地の摩擦を減らすことで静電気の発生を抑え、親水基が空気中の水分子を吸い寄せることで、生地の表面に水の膜のようなものを作って電気を逃がしやすくするという仕組み。
また、生地に金属やカーボンを含んだ導電性の糸を織り込む、もしくは編み込むことで電気を逃がしやすくするという生地も開発されている。電気を帯びた布の表面に導電性繊維が接触することで、【コロナ放電】という現象が発生し、空気中にイオンが生じる。このイオンと、帯電した布の電荷が中和していくことで、帯電を解消するような原理となっている。
カジュアル服に対しては、静電気のパチっと火花が飛ぶ不快感を防止するためであるが、化学工場などで使われる作業服は、静電気によって危険物に引火して爆発事故が起こってしまう可能性があるため、静電繊維・導電繊維を使用していることが安全上に必要不可欠の機能となっている。
繊維によって違う水分含有量の違いに関してこちらも参照にして下さい
公定水分率
公定水分率 公定水分率とは、【温度20℃湿度65%】の環境における繊維に含まれる水分の割合を示しています。糸や繊維は取引をする際に、1kgが○○円といったように【重さ】を基準としています。 ですが繊維 ...
静電気のデメリット
- ドアノブなどに触れてバチッっとショックがある(放電現象)
- ホコリ・微粒子・花粉が吸い寄せられる
- ストッキングをはいた足にスカートの裏地がまとわりつく
- 粉塵内や可燃性の高いものがある場合に、放電による発火の可能性
静電気を防ぐ方法
1.湿度を高くする
静電気は気温25℃以下、湿度20%以下の環境で発生しやすく、日本の冬の環境がまさにそのような状況。加湿器などで使用して適度に温度・湿度を上げるのが良い。
2.帯電防止剤を生地に塗布する
帯電防止剤は、空気中の水分を吸着しやすくなることで導電性(電気の通しやすさ)を付与する界面活性剤タイプのものが主流です。生地表面の導電性が高くなると静電気が逃げやすくなります。衣類にスプレーして静電気を防ぐものは、帯電防止剤が使用されています。
3.導電性繊維の使用
導電性繊維とは、ナイロンやポリエステル糸の芯部分に繊維の製造段階にカーボンブラックなどの導電性の物質を入れ(炭素は電気を通しやすい)を入れた繊維を入れたり、表面に金属を蒸着させて導電性を持たせた繊維のことです。生地が帯電した場合、導電性繊維は雷が避雷針に引き寄せられるのと同じ様に、静電気が導電性繊維に引き寄せられます。導電性繊維に集まった静電気はコロナ放電という微弱な放電を始めるため、帯電が起こりにくくなります。帯電防止剤は、洗濯等により徐々に効果は薄れていきますが、導電性繊維は破断しなければ半永久的にその効果を発揮します。そのため、静電気による事故が発生しやすい電子部品を扱う工場や、危険物を扱う化学工場・ガソリンスタンドでの作業服は、耐久性のある導電性繊維の入った生地が使用されています。
4.素材を選ぶ
実は素材によって、プラスの電荷を帯びやすい素材とマイナスの電荷を帯びやすい素材があります。帯電列で遠いもの同士が接触すると静電気が発生しやすくなるので、逆にできるだけ帯電列の近いもの組み合わせると静電気防止に繋がります。冬に人気のポリエステルとウールを組み合わせるよりも、木綿や安里組み合わせた方が静電気を防止できます。
5.デザインで工夫する
部分的に導電性の繊維が縫い付けられていても、静電気を抑えることができます。そのため表地と裏地の組み合わせ(ウールにレーヨン裏地)・縫い代のパイピング、ポケットなどの別パーツ、それに導電性の繊維を使用するといったデザイン面での工夫も考えられます。