アパレル企画開発コストから大ロットと小ロットを比較
アパレル生産では、ファストファッションのように大量生産すれば低価格で販売することができ、小ロットになれば高くなってしまいます。未だになぜ小ロットだと高くなってしまうのかという理由に関して明確にイメージができていない場合があるので製品の企画開発段階でどのようなコストが掛かり、大ロットと小ロットでどのように差が出てくるのかを比較して解説していきます。新規ブランドを考えている方に、少しでも参考になればと思います。
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アパレル製品の企画開発コストとは
アパレル製品にはどんなコストが掛かっているのでしょう?以前、元ZOZOの前澤氏がアパレル製品の原価率についてSNSで「いまお店で約1万円くらいで売られている洋服の原価がだいたい2000~3000円くらいだということを、皆さんはご存知ですか?」ということを発信して話題となりました。OEM生産」をしてきた感覚からすれば、製品を作るために必要な原価としては大きく間違ってはいないと思います。しかし、それにはアパレル会社で仕事をしているデザイナー・MD・販売員などなどの給料が入っていないと思われます。
アパレル製品の原価
製品開発費(サンプルやパターンの費用÷生産枚数+本生産資材+加工賃=製品原価】
1.原材料・生地
アパレル製品のベースとなる生地の価格。ジャケット・コート・ワンピースなど、生地を沢山使う商品ほどその割合が高くなる。1mあたりの生地の値段と、1着あたりに必要な生地m【要尺】をかけ合わせて計算する。【要尺】は、使用する生地の巾にパターン(型紙)を並べて計算する。服のデザインによっても変動し、またサイズによっても変動する。また生地にボーダー・チェック・ドットなど柄合わせが必要な場合は、要尺の算出には注意が必要です。
1着に必要な生地価格 =1mにおける生地の価格 × 1着に必要な生地の要尺
初回サンプル 1着 | ¥1875(1着)=¥1500/m × 1.25(m) |
展示会サンプル 3色各1着 | ¥7500(3着)=¥1500/m × 5(m) |
合計 | ¥9325 |
ポイント
1着に必要な生地価格 =1mにおける生地の価格 × 1着に必要な生地の要尺
初回サンプル ¥1875(1着) = ¥1500/m × 1.25(m)
2.服飾資材
服飾資材は、デザインやアイテムによって個数・使用量によってコストが加算されます。原材料の生地の計算と同じように、資材単価に1着あたりの必要mや個数によって計算します。アパレル製品では、必ず使用するブランドネームや品質表示や洗濯や使用上の注意が書かれたタグも必要であり、これらは製品を作るうえでの固定費のように計算することもあります。
カットソーシャツ資材イメージ
資材 | 資材単価 | 必要数 | 1着あたりのコスト |
ボタン | ¥25 | 5 | ¥125 |
別布 | ¥700 | 0.05m | ¥35 |
ブランド資材 | ¥100 | 1 | ¥100 |
初回+展示会合計 | ¥1040 |
3.パターン
パターン(型紙)はアパレル製品に必要不可欠な設計図となります。大まかにはプロトサンプル(1st)⇒展示会サンプル⇒修正サンプル⇒本生産用グレーディングの順にパターンが必要となる。もしさらに修正回数が増えるとその分だけコストが増えることになる。コスト計算の方法としては、全てのパターン代金から本生産数量を割り返して計算する。もしくは、サンプル代という項目でサンプルに掛かった代金にトータルで含めて、本生産数から割り返す場合もある。
一例のイメージ(カットソーシャツ)
プロトパターン | ¥15000 |
展示会用パターン | ¥5000 |
修正確認パターン | ¥5000 |
本生産パターン | ¥25000 |
合計 | ¥50000 |
ポイント
1着あたりのコスト = パターン合計料金 ÷ 本生産数量
4.サンプル縫製料金
製品サンプルの縫製は見本もなく、少数の縫製ということから、もちろん本生産よりも料金がかかります。縫製工場ではサンプル専門の工場よりも若干料金を安くサンプルを受けることもできますが、あくまで本生産をあるということを見越しての料金となります。
カットソーシャツ程度のシンプルなアイテムイメージ
初回サンプル1着 | ¥15000 |
展示会サンプル各色1着(3色の場合) | ¥45000 |
合計 | ¥60000 |
5.二次加工データ+サンプル加工費
プリントや刺繍にはデザインと、さらに刺繍のためのデータ、プリントにはデータや版といったものが必要になります。
刺繍 | データ | ¥5000~¥10000 |
スクリーンプリント | データ + 版 | ¥5000 + ¥8000/1版 |
インクジェット | データ | ¥5000 |
6.生地・製品試験費用
より良い製品を流通させてお客様に満足いただくことがアパレルブランドの使命と考えるなら、製品の品質に問題ないか試験をしておくことも必要です。またどのようなお手入れ・洗濯方法が必要なのかを確認し、適切な取り扱い方法をユーザーに伝えるのも重要。大手流通企業や百貨店などには独自の検査基準を設けいて、クリアしなければ販売できない場合もあります。
スポーツウェアとして必要な項目例
染色堅牢度(洗濯・耐光堅牢度・汗・摩擦)4項目 | ¥5000 |
色泣き(異素材濃淡組み合わせの場合) | ¥700 |
汗耐光(スポーツ系) | ¥2100 |
製品検査 | ¥1500 |
寸法変化率 | ¥2000 |
合計 | ¥11300 |
生地の基本的な検査に関しては、生地メーカーが検査を行っていることが多い。生地をどんな製品にするかで、検査に必要な項目が変わってくるので、その際は別途製品メーカーが検査を行う。最低限このような検査データを取得することが、ユーザーに良いアパレル製品を提供するためには必要となる。
*子供服にはホルムアルデヒドの項目などが必須となってきます
ロット別で企画開発費を比較する
企画開発に掛かる費用例
この表はカットソーシャツに、ワンポイント刺繍が入るくらいを想定しています。実際には企画開発に掛かる費用はデザインによってかなり変動します。この開発費が1品番を生産する前に必要となる費用となり、本生産の際に製造原価に上乗せされることになります。(下の表のコストはおよそで計算しやすい金額としています)
原材料 | ¥10000 |
服飾資材 | ¥1000 |
パターン | ¥50000 |
サンプル縫製料金 | ¥60000 |
二次加工データ・サンプル | ¥10000 |
生地・製品試験料金 | ¥12000 |
合計 | ¥143000 |
生産数別企画開発費
昨今では、大手アパレルブランドでも2ケタや100前後という生産数の品番も多くなってきています。多品種小ロットという傾向は、このように1着にかかる企画開発費の割合が上がっているというわけです。そして、そのコスト高によって縫製工場の本生産工賃が圧迫されているという影響も出てきているのです。
生産数 | 1着あたりの割り返しコスト |
50 | ¥2722 |
100 | ¥1361 |
1000 | ¥136.1 |
10000 | ¥13.61 |
50000 | ¥2.722 |
ポイント
アパレル製造原価 = 企画開発費 + 本生産の製造費
*但し、生産管理やデザイナーの給料は利益から支払われると想定
アパレルの大ロットと小ロット生産について
上の表を参考にしていただくと、生産ロットによって1着あたりのコストに圧倒的な差が出てくるのがお分かりいただけると思います。そしてアパレル製品ではデザインが同じだとしても別の生地を使用すると、主に収縮率・伸縮性能の違いから同じパターンを使用することができないことが多く、データの蓄積による開発費の削減も難しい場合があります。しかし実績ある生地を使用することや、二次加工のデザインを継続的に利用できるように考えるなど、地道に企画開発費を削減することもできるはずです。
開発コスト削減方法
定番品の開発 |
サンプル作成数の削減(生地スワッチのみで展開やデジタル利用) |
使い回しの効く二次加工デザイン |
サイズ展開の少ないパターン |
アパレル業界にいれば当たり前と言われることかもしれませんが、なかなか徹底して意識できてはいないのではないかと思います。そして何よりトラブルの多いアパレル生産において、コストが無駄となるトラブルを起こさないこと、未然に防ぐこと、過去の事例を活かすことが根本的なコストの削減に繋がるのではないかと考えます。
ポイント
ある縫製工場さんがマスクの依頼を受け、オリジナル刺繍の入ったマスクを数十枚生産しました。しかし、刺繍が高かったからという理由で今度はプリントで数十枚生産してほしいと依頼されました。コストと生産数が大きく関わってると知らないと、このように手間・時間・コストが余計に掛かることに繋がる可能性があります。
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