
アパレル生産管理の仕事とは【OEM・ODMの生産管理】
アパレルの生産管理とはアパレル企業内の主に製品の品質や納期を担うポジションのこと。英語にするとプロダクトマネージャーと訳しなんとなくカッコよくも聞こえてくるのですが、実際には非常に地味な業務が多いです。ですが業務内容としてはアパレル製品の様々な知識が必要で、品質や納期においても縫製工場だけでなく生地屋さんや、二次加工場、さらに物流検品会社ともコミュニケーションが必要です。アパレルにおける利益に直結する商材そのものを管理するという重要な仕事です。ここからは、そのアパレル生産管理に必要となる知識やスキルを実際の現場経験にもとづいて詳しく解説していきます。
アパレル業界の転職でトップクラスの実績があるエージェント
▶▶▶クリーデンスに無料登録する
アパレル生産管理の業務内容

アパレル生産管理の仕事と言っても、会社によって担当範囲が変わってきます。営業と生産が全くの別体制で部署を作っている会社もあれば、得意先への営業から縫製工場とのやりとりまで一括でコントロールすることもあります。昨今の多品番・小ロットの場合は、打ち合わせしたことをさらに社内で生産打ち合わせすることも手間と時間がかかってしまいます。売上規模で生産担当がついたり、つかなかったりというパターンもあります。基本的には営業のように直接売上の数字に携わるわけではなく、製品の企画やパターンに直接携わるわけでもないですが、生産においては全てのポジションの関係をつなぎ、資材の準備から製品が出来上がるまでを担う制作総指揮と言えるポジションです。
資材の優先手配の順
1 | オリジナル生地・染糸 |
2 | 定番ストック生地 |
3 | ファスナーや海外手配資材 |
4 | ブランドネーム・洗濯絵表示・縫製ラインに必要な資材 |
5 | ボタン |
6 | 下げ札 |
7 | 梱包資材 |
1.生地発注

アパレル製品は生地をはじめとしていくつもの資材が各アイテムごとに必要となります。特に生地は在庫がストックされている生地以外は、かなり時間がかかると考えておいたほうがいいです。オリジナルの生地であれば、発注から出荷までは3ヶ月以上かかる場合もあります。製品の発注からどれだけ早く生地を投入できるかが大きなポイントと言っても間違いありません。あらかじめ時間のかかる生地をチェックしておくことや、ストックしてある生地に関しても押さえておくことも考えておきましょう。生産管理といえば縫製工場とのやり取りを思い浮かべるかもしれませんが、製品の生産期間をトータルで見てみると、縫製工場で製品が動いている期間というのは実際には非常に短いものです。
2.資材発注

資材に関しては、全て即発注するほうが漏れがなくて良いとは思います。しかし優先順をつけるならば、第一はファスナー。ファスナーはYKKの生産が一極集中してしまうので、生産スケジュールは早いもの勝ちでスケジュールを押さえなければないません。ファストファッションの会社がファスナーを使用する製品に力を入れるだけでファスナー生産ラインが独占されてしまい、納期が非常に遅くなってしまう可能性があります。
続いては海外で手配しなければならないような納品に時間が掛かってしまう資材。そして次に優先すべきは縫製工程のラインの中で使用する資材です。洗濯ネームなどは最悪後付けできると考える方も多いですが、流れで一緒にできる作業を改めて別で取り付けるのは1工程増えることと同じです。資材がラインの途中に使うものであればラインが止まる可能性もあるので、どこで使用するものかで生産が進行できるかできないかに関わります。ボタンのように、最後に取りつけることができるような資材に関してはロスが比較的少なくて済みます。
基本的には生産がスタートする前に資材は全て揃えておくことが重要。資材が揃っていないと生産ラインはスムーズに稼働しないので、工場の効率を落とすことになります。
3.縫製仕様書の作成

OEM生産の場合、アパレル企業側で作成された仕様書があります。生産担当者によっては、その仕様書をそのまま縫製工場用の仕様書として流用する場合もあります。しかし、手間が掛かっても独自で統一の書式にすることをオススメします。
第一にそのままの仕様書を流用する人の多くはその仕様書をしっかりとチェックしていないことが多いです。そのため生産のトラブルの発見も遅れ、工場からの問い合わせにもすぐに対処ができません。サンプル作成時から自社専用の仕様書を作っていくことで様々なミスの原因を洗い出すことがきできるので、本生産の仕様書を作るまでに精度の高い仕様書を作ることができます。
仕様書の基本条件
- 生産現場の相手に正しく伝わること
- 自分が仕様に関して理解していること
- 見返した時に分かりやすいようにしておくこと
自分の経験としてはサンプル時から仕様書を作りこむことで、本生産時には各品番のデザイン・仕様を覚えてたので、外出先では仕様書を見ないでもある程度工場からの問い合わせに答えることができました。
現場で生産する人に伝わる仕様書を作るには 続きを見る
プログラミングに学ぶアパレル仕様書の書き方【伝える力】
4.縫製スケジュールの管理

縫製スケジュールの管理に関しては縫製工場に入ってからというよりも、どのような順番で資材が揃うかを確認して、どの品番から順に生産可能になるのか?ということを整理して打ち合わせをするほうが良いでしょう。縫製工場は結局は資材やパターンが入荷してからでないと何も動くことができません。資材スケジュールが分かって初めてどの品番を優先し、どのような順で進行していくのかという縫製スケジュールを検討することができます。資材の遅れやトラブルに関してもしっかりと連絡して対処法を考えながら進行しましょう。
5.二次加工スケジュールの管理

受注数を決まっても刺繍・プリント工場などの二次加工工場に数量を連絡するのが遅いアパレル生産管理は案外多いです。アパレル生産は縫製工場とのやり取りがメインと考えて、二次加工に関しては疎かになってしまう場合があります。
特に日本製では、裁断してから二次加工のスケジュール管理ができずに縫製工場にパーツが戻らなくて納期に間に合わないという状況も多々あります。二次加工に関しても、何も準備がないわけではありません。受注数連絡を早急に行うことで進められる準備があります。生産管理としては、自分のデスクのみで仕事は完結できないということを念頭におくといいと思います。【連絡をしっかりとする】これだけで現場では準備できることがあるということを理解することが重要です。
二次加工の中にはワッペンなど、部品を用意しておける場合や、ワッペンを縫製工場で取り付ける加工もあります。多数の品番の中で、先に取りかかれるもの、時間のかかるもの、裁断品がなければできないものを分類して二次加工場さんとも打ち合わせを行いましょう。
参考
OEMの場合、同じ二次加工デザインを他社メーカーも使用することがあります。自分が受注数量を連絡し、ワッペンを先に生産してもらうようにしていたのですが、2週間後にも他社メーカーから数量連絡が来なかったということで全く進行していないということがありました。縫製工場も二次加工場も様々なメーカーからのスケジュールにも影響されることを忘れないで下さい。
5.製品品質の管理

製品に起こりうるトラブルの多くはサンプル段階でおおよそ発見できます。しかし、サンプルとは製造状況が違う他、本生産時のシーズンは全く正反対の季節ということがあります。生地・縫製・二次加工の各場面で起こる可能性のあるトラブルには注意を促すようにしましょう。連絡するだけで、トラブル発見率は格段に上がることがあります。
注意を促すだけでトラブルを発見しやすくなる効果についてはコチラから 続きを見る
【アパレル生産管理】検品精度を上げる方法(カラーバス効果とRAS)
製品の検品方法に関しては、見落としのないようにチェックするためのリストを作成しておくのが便利です。アパレル生産管理という業務を行っていても時間に追われたりで、ついつい検品の見落としをしてしまうことがあります。そんなときのために、各アイテムごとに必ずチェックする箇所をリスト化しておくと、イージーミスを減らすことができるでしょう。
6.生産工場とのコミュニケーション

日本の縫製工場の規模では、窓口となる人員も限られていて多くの工場では社長自身が一人で対外折衝をしていることが多いです。縫製工場とのコミュニケーションは大切なのは間違いありませんが、個々の連絡をその都度行っていては工場の生産効率が落ちてしまいます。縫製工場現場には、なるべく現場仕事に専念できるようにすることが重要。連絡すべきことにも優先順位をつけて、忙しい時間、出荷前、などを避けて電話・FAX・メールのそれぞれの特性を使い分けるようにしましょう。
メリット | デメリット | |
電話 | すぐに伝えられる 密な連絡 声のトーンも伝わる | 作業を止めてしまう 忘れる 勘違いの可能性 |
FAX | 文章・図で詳しく伝えられる | 取り忘れ 用紙の紛失 印刷性能の差が出る |
メール | 連絡事項を確実に記録できる 後からチェックできる | PC・スマホを見ていない可能性 |
工場と連絡を取る手段とタイミング
工場は日中はできるだけ生産的な作業に集中してもらうことが好ましいです。(連絡を取るタイミングとしていいのが、朝一・昼前・15時休憩頃・出荷作業完了の17時半くらい以降)アパレル生産管理者が現場の工場に連絡するときには、できるだけ相手の都合を考え、【その連絡事項が本当に今すぐ、電話連絡が必要なことなのか?】も意識してみるといいでしょう。但し、工場からの問い合わせには原則として即答、先方に確認が必要なことも最短で確認をとるようにしましょう。工場の生産ラインを止めること、滞らせてしまうことは工場のためだけでなく、相手先のアパレル企業に対しても納期遅れなどの原因の一因になります。先方に嫌がられる場合もありますが、大至急の確認を求めるべきです。
現在作業をしている品番 止めなければトラブルが拡大する場合 | 即時電話 + 詳細をメールかFAX |
重要な変更だが今すぐ対処が必要ではない事項 | FAXかメール 後に電話で詳細打ち合わせ |
進捗状況の確認 | FAXかメール いつまでに状況連絡がほしいか電話 |
工場からの問い合わせ | 即時電話連絡 |
*工場からの問い合わせに関しては、今作業していることである場合が多いことを意識することが重要です。


*納期遅れをしている時に、何度も状況を問い合わせする人がいますが、そうそう急に生産数が奇跡的に上がることはありません。無駄な連絡は現場の手を止め、工場との関係を悪くする可能性もあるので注意 続きを見る
【アパレル生産管理】工場の納期は極端に早まらないことを簡単に解説
7.まとめ アパレル生産管理として意識してきたこと
アパレル生産管理の仕事は、営業職のような売上成績が反映するようなポジションではありません。社内の立場としては数字を持っている営業の方が評価されることも多いでしょう。ですが、生産管理のポジションは場合によっては工場の売上に大きく貢献でき、また場合によっては工場に大きな損失を与えかねない重要な業務です。生産現場に近いポジションであり、縫製工場にとっては経営部分を除くと工場の社長や工場長のように現場の流れに責任のあるポジションだと思います。
工場に出張や研修の際に意識すべき点についてはコチラから 続きを見る
アパレル生産管理が工場研修で意識して学ぶべきポイント【重要】
実際に服のデザイン仕様や縫製に関しての知識は必ずしも必要というわけではありません。基本的に物作ることに関しては、現場の意見を聞き、現場に任せてもいいでしょう。生産管理として最も重要なのは、自分の責任において生産現場の流れをいかにスムーズに流れさせるか、トラブルが起きた場合もいかに早く適切な方法で手を打つかということだと思います。実は生産管理=プロダクトマネージャーと訳した言い方のほうが本当に業務の役割を理解できるのではないでしょうか。工場の従業員は、直ぐ側にいなくても生産管理の指示のもとに仕事をしているのです。
生産管理の心得
- どうすれば相手に分かりやすいか?
- どうすれば相手がスムーズに作業できるのか?
- どうすればミスや勘違いを起こさせないのか?
アパレル生産管理は工場さんとしっかりコミュニケーションをとって、こだわりの良い製品を一緒に作り上げていくことができる仕事です。製品プロダクトの要で多くのネットワークもできるやりがいの持てるポジションです。
/// 転職登録・相談は無料///
※無料でアパレル業界の転職を目指すなら、ファッション・アパレル業界専門の転職支援サービスのクリーデンスがおすすめ。人気の有名ブランドを含む3400社以上の企業から、あなたに合った求人を探して無料で転職サポートしてくれます。
▶▶▶ 無料でクリーデンスの転職支援サポートに登録する