
【アパレル生産管理】検品精度を上げる方法(カラーバス効果とRAS)
人の脳の研究が進んでいく中でマーケティングの分野で心理学が利用されているのは、たびたび耳にする方も多いのではないでしょう。今回はアパレルメーカーでの生産管理経験から、カラーバス効果やRAS(reticular activating system)の働き意識をすることで、アパレルの製品検品の段階でトラブルを減らすことに繋がるのではないかと感じたことを、実際の事例を元に解説していきます。
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カラーバス(collar bath)効果とは

人は、あることに意識(フォーカス)することで、その情報を無意識に自分に集まるようにしているという現象が起こります。
まずは、なんとなく窓の外を眺めてもらったとします。目を閉じてもらって、「赤いものは見えましたか?」と質問します。「・・・○○の看板。」とか「○○の自販機」とか答えが出るかもしれません。ですが、さほど他に記憶に残っていないものです。
そして、改めて目を開けて景色を見てもらうと、電柱・屋根・標識・ビルの間に、、、他にも数多くの赤いものがこんなにも沢山あったのかと気がつくでしょう。もはや、その赤ばかり目立って、先程までとは違う景色なのではないかと思えてしまうくらいです。
これが、カラーバス効果、カラー・color(色)をバス・bath(浴びる)ことで、その情報を脳が無意識に優先して取り入れてしまう現象です。もちろんこれは色に限ったことではなくあらゆる情報に対しての意識することが、カラーバス効果に繋がります。
RAS(reticular activating system)とは

RAS(reticular activating system) 脳幹網様体賦活系(のうかんもうようたいふかつけい)
「脳幹」にある神経の束を「網様体」といいます。私たちは、毎日とんでもない量の情報を得ています。ちなみに脳の記憶容量は約17.5テラバイトと言われています。最近では1テラバイトのハードディスクが手の平サイズ以下になってきています。
17.5テラバイトというと大きいようにも思えますが、毎日五感をフル稼働している私たちではすぐに不足してしまう程度の記憶容量です。実はその記憶容量がパンクしないように、フィルターをかけて制限しているのがRASの役割です。私たちが意識していない情報は、無意識のうちに仕分けされて、ほとんどが不必要な情報として処理されています。その中で、私たちは欲しいと思った情報(意識した情報)のみを、より分けて受け取っているということです。
その結果「久しぶりにラーメンが食べたいな。」と感じて、電車の窓から外を見ていると、ラーメン屋さんばかり発見したり、「高級車のポルシェに乗りたいな」とか、考えていたら”あれ?なんだか、意外とポルシェがいっぱい走っているな”なんて感じてしまったりするわけです。もちろんこれは、お店が増えたわけでもなく、ポルシェが増えたわけでもありません。
ポイント
因みに、私はスバル車に乗ったとたんに、周りにスバル車が増えたように感じてしまった覚えがあります。
それは自分が気になる情報を無意識に選んだ結果として、あたかもその情報が沢山あると感じたためです。
カラーバス効果とRAS
カラーバス効果とRASの仕組みをまとめると、、、
- 私たちの脳は自分に都合よく、欲しい情報だけを優先して取り入れている。
- 意識していない情報は見えにくくなる
ということが言えるのではないでしょうか。
カラーバス効果やRAS(ラス効果)といった脳の働きは、確かにみなさんでも思い当たる節がたくさんあると思います。
アパレル検品で起こっているRASのフィルター

アパレル製品の検品はデザイン・配色など仕様書と照らし合わせる部分と、個人の目や注意力が重要となる生地・縫製・二次加工などに問題がないかをチェックする部分があります。生地・縫製・二次加工に関するトラブルは規則性がなく、経験していなければ想像できないようなトラブルが起こることもあります。
ここからは生地・縫製・二次加工など、規則性がないトラブルで起こりやすい事例をもとに紹介します。
ある程度製品の検品を進めていた途中で不良個所を発見する
製品の不良は検品をある程度進めたあとでも突然見つかることがあります。不良箇所を検品者で共有して、さらに検品を進めるとそこから次々と不良が発見されることがあります。
不良箇所を見逃していないか確認するため、検品済みの商品をチェック
一度製品不良が見つかってから次々と不良が見つかったため、すでにチェックを終えていた商品に見落としがないかチェックをする
チェック済の商品の中にも、次々と不良箇所が見つかる
すると、しっかりと検品をしていたはずの商品の中からも次々と不良箇所が発見されてしまう。
その不良箇所は製品が出来上がるまでに、何人もの目の前を通っていても、認識すらされていなかったのです。
不良だと認識していなければ、不良は見つからない

そもそも検品作業をしている人たちの多くは、生地・服・二次加工のプロというわけではありません。つまりは一般の消費者の視点と大きく変わらないのです。そして一般の消費者が手にしている製品は95%以上はA品でしょう。ほとんどの人はB品など見たことがなく、どんなトラブルが起こるのか想定していないのです。
「無意識に私たちのところには、A品の生地が届くはず、縫製もプリントも刺繍も問題ないはず」っと思っているでしょう。
ポイント
- まさか、生地に色ムラがあるとは思わなかった
- まさか、生地に織キズや編みキズがあるとは思わなかった
- まさか、生地に別の色の糸が入り込んでいるとは思わなかった(異原糸)
- まさか、プリントに欠けている部分があるとは思わなかった
現場の人たちは、そもそも生地の専門家でもなく、プリントや二次加工の専門家ではありません。どんなトラブルが起こり得るか知らなければ、認識することは難しい。それが先ほど説明していたRASの役割だからなのです。
アパレル検品でカラーバス効果を使って精度を上げるには

トラブルの可能性や注意点をきっちり意識してもらうだけで、カラーバス効果によってトラブルのリスクはかなり低減できます。
サンプル段階での情報収集
過去の生地との比較や、原材料の混用率、生地のデータから、サンプルを作成している間に、なるべく情報を集めておくことが重要。プリントや刺繍や染色といった、二次加工に関しても起こりうるトラブルの可能性を把握しておくことも大切です。生地やプリントなどの試験も参考になります。
過去の経験と事例からの判断
アパレルの生産管理担当者であっても同じく、経験したことのないトラブルに対しては同準備をしておけばいいか分かりません。工場や上司・同僚から、過去のトラブル情報はできるだけ情報共有すべきです。縫製工場任せ、二次加工場任せでは、という考え方ではトラブルは減らないと考えた方がいいでしょう。
【以前にこのブランドを生産したことがある工場だから、任せていおけば大丈夫なはず!】っというふうに捉えてた生産マンは、ことごとくトラブルに見舞われていました。
カラーバス効果を最大に高めるには、書くこと・話すこと・残すこと
結局アナログな方法のように思えますが、人が作業を行っている以上これが全てです。FAXで流すだけ、電話で話すだけ、ではまだ不足しています。書面で丁寧に伝えて、尚且つその書面を見ながら電話で確認する。そし手事例を写真などで残していくこと。これで人員が変わっても検品の精度を高めることができます。
さらに徹底する部分として
徹底すべきポイント
- 仕様書には、トラブルの可能性と、ミスしやすい箇所等を必ず目立つように(カラーで)記載しておく
- パターンにもミスしやすい箇所を記載しておく
- サンプルには、注意点やミスしやすい箇所にタグをつけておく
トラブルを経験しても時間と共に忘れたり、人が入れ替わったりしてしまいます。意識してもらう。目に付くようにすること、なるべく情報を定期的に出すようにしましょう。
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アパレル生産でトラブルを減らすには

アパレルの生産は予想するのも難しいトラブルが多く、ミスなく管理するのは非常に難しいです。仕様書への記載や連絡を徹底するのも、担当する型数によってはとても対応できないかもしれません。ですが、縫製工場さんとの連携を積み重ねていくということが大切です。
生産管理者が適当な応対をしていれば、【この程度でいいか】という意識にもなってしまいます。
しっかりと工場さんとの関係を築いていくことで、この生産管理の担当している製品は、きっちりしないといけないという意識も働き始めます。そして、自分がうっかり見逃してしまったことや、知らなかったことも自ずと確認を取ってくれるような関係を作れるでしょう。
アパレルの生産管理は、縫製工場さんにお任せという形で手を抜くこともできてしまいます。ですがトラブルが起きた時は、生産管理の責任です。生産管理とは【製作総指揮】する立場です。適切な情報・適切な指示がなくても、きっちり製品が上がってくるなら、アパレル生産管理なんていらないのですから。。。
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