アパレル生産管理も縫製工程分析の基本を理解した方が良い理由
アパレル生産に携わる場合は縫製工賃と生産納期、この二つが大きく関わってきます。縫製工場において、この二つを決定しているのが各アイテムの工程数となります。工程がどれだけ複雑で、どのくらい期間を要するかによって工賃や納期が変わってきます。しかしアパレル生産管理のポジションにいても、工程分析に関して知識がない方が多いのが現状です。この記事では、簡単なTシャツの工程分析からどのように生産期間や工賃を算出してるかをイメージできるように解説していきたいと思います。
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アパレル生産管理とは
ファッションアイテムを企画・デザインから販売を行うアパレル企業と、実際に製品を製造するメーカーは別であることが多く、製造を担うメーカーはOEM・またはODMメーカーと呼ばれています。そのOEM・ODMメーカーが自社工場で生産をしたり、外注工場と直接やり取りを行っているのが生産管理です。
しかし、最近では生産に関心しての知識がなく、工場に任せきりで丸投げといった状況を耳にすることが多くなりました。特に海外生産工場には生産事務担当者がいることが多く、日本からは仕様書のみで、ほぼ丸投げで管理をしなくても製品が出来がってくることもあります。ですが意思疎通がしっかりとできていないとトラブルも頻発し、日本に荷物が到着して初めて問題が発覚することも起こります。生産トラブルを少なくするには、やはり洋服がどのように生産されているのかという基本的な知識を持って縫製工場とコミュニケーションをすることが大切だと思います。
工賃見積もりに必要な縫製工程分析
アパレル生産管理の役割として縫製工賃の交渉は避けて通れない業務の一つです。生産に関しての知識が不足していると、見積もりを依頼するときに縫製工場さんが必要とする情報が不足していたり、食い違いが起こりやすくなります。アパレル企業や担当者さんにもよりますが、取引先から簡略なデザイン画や写真だけで見積もり依頼がくる場合もあります。そんなとき生産管理としては、工場サイドと話をする前に必要な情報をチェックしておく方が、何度も連絡するなどの無駄な時間をかけることなく見積もりを出しやすくなります。
縫製工場さんに縫製工賃の見積もりを出してもらう時に、どのような基準を持っているでしょうか?これまでの生産実績からのイメージや似たデザインを参考にすることも一つですが、何となく「安くしてください」っと交渉しているのをよく見かけました。そして工場サイドからの見積もりが想定と違って高かった場合に、なぜそんなに高くなるのか?ということに関してお互いに理解も納得もできずに交渉が決裂してしまう場面も多かったです。
こういった場面の多くは縫製工場さんの説明に対して生産管理が、デザインや仕様の違いでどれくらい生産の流れが変わって時間が掛かるのかということが理解できないことが多くの原因となっています。現在ではほとんどの場面で工程分析として書き出す場面はなく、工賃も縫製工場の社長の頭の中で組み立てているだけの場合が多いです。生産管理をする側も基本的な工程分析を理解する努力をして、複雑なデザインで工賃が高くなる部分、仕様を簡単にして安くしてもらうといった相互理解をする努力も必要ではないでしょうか。
*見積もりをスムーズしてもらうコツはコチラの記事も参考にしてください
アパレル生産初心者でも縫製工場にスムーズに見積もり依頼する方法
アパレル初心者でも縫製工場にスムーズに見積もり依頼する方法 アパレル未経験者の場合、商品を生産したいと考えたとき、縫製工賃の見積もりをどのように出してもらえばいいか分からないことが多いようです。そして ...
生産工場の選択の余地のあった15年以上前ならそれでも良かったかもしれないが、日本国内の工場は減り続けている。地方といえど最低賃金は毎年上がり、外国人実習生制度も複雑化と新機構の仕事の停滞、そして新型コロナウィルスによって実習生の入国がなかったため、さらにアパレル縫製工場のキャパが減り、廃業も増えています。今後はさらに、これまでの実績単価というだけでは縫製工場も低単価の仕事を受けるわけにもいかなくなるのは間違いありません。
中国の工場でも沿岸地域の人件費が上がっており、効率の悪い小ロットは受注しないケースが多い。東南アジアもまた同じ状況になってきています。
今後アパレル生産管理の仕事をする上では基本に戻り、ある程度生産工程分析を行い、生産の流れや工程ラインを理解して、縫製工場とフェアな交渉をできる知識を身に付け、継続的に仕事ができる関係を築いていかなければならないと思います。
スリット付きTシャツから基本の工程分析を考える
ハンガーイラストから工程分析を考える
まずは非常に基本的な形のスリット付き半袖Tシャツのハンガーイラストです。スリットは二つ折りで、袖口の二本針は丸縫いではなく先に平状態で二本針始末をすることを想定し、衿はフライスを使用しているTシャツです。しかし、このままでは縫製工場にはまだ目に見えない部分での選択肢もあります。
- 袖を身頃が開いた状態の平で縫製するか
- 身頃の肩と脇を先に縫製して、袖を丸縫いするか
一般のユーザーでこの違いを気にされる方は99%いないでしょう。また裏側を見ないでこの縫製の違いを判断することはアパレル業界の人でも少ないと思います。着たときの違いが分かる人もほとんどいないのではないでしょうか。それでも丸縫いという指定をされる場合は稀にあります
Tシャツ(脇ー袖下一気縫い) 工程分析と図解
Tシャツ(袖丸縫い) 工程分析と図解
縫製工程分析から見積もりの考え方
- 3人のラインの場合 1日の持ち時間
: 60秒 × 60分 × 8時間 × 3人 = 86400秒 - 86400秒 ÷ ( 工程の合計タイム × 余裕率 ) = 1日の想定枚数
- ラインの目標売上 ÷ 1日の想定枚数 = 見積もり工賃
工賃の見積もりは、基本的には上記のような計算式が成り立ちます。
アパレル生産の縫製工場などの作業現場は時間=コスト
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なるべくお手頃にユーザーに届けたいが、材料が高いので工賃を抑えたいということは非常に理解できます。工程分析を踏まえた上で、工賃を抑えたいと考えるならば、必ず頭にいれておかなければならないのは、作業する現場にとって時間=コストだということです。工賃を抑える交渉は、いかに短時間で生産するか?余計な時間を省くにはどうすればいいか?を共に考えることだということです。それを共に考えるためには、やはり生産の流れを知ることは重要ではないかと思います。
工程分析はイメージだけでもOK 時間とコストの関係を理解する
工程分析を全てのアイテムで行うのは難しいですし、洋服の縫製方法をかなり熟知しなければなりません。なのでまずは基本的な時間とコストの関係を理解すればいいと思います。上記の同じTシャツの2種類の工程分析をもとに考えると、袖丸縫いのTシャツは脇ー袖下一気縫いのTシャツより、1着につき20秒多く時間がかかっています。20秒という差は長いと感じますか?短いと感じるでしょうか?数十着くらいならさほどこの時間差は気にならないかもしれません。しかし、仮に3000枚の生産があったとすると下記の計算が成り立ちます。
- 20秒差 × 3000枚の生産 = 60000秒
- 60000秒=16.6時間=3人ラインの約5時間半
- 60000秒= 最も安い地域の最低賃金¥762 × 約5.5時間 × 3名
= ¥12573(福利厚生・光熱費 他含まず) - 60000秒= 脇ー袖一気縫いTシャツ 180枚分の縫製時間
= 工賃¥462の場合は ¥82800の売り上げ
このように計算すると、20秒も非常に大きなものであり、また工場現場での時間の大切さがどれだけ売り上げに影響してくるかを理解することができるのではないでしょうか。それは工賃の問題だけではなく、生産管理として工場現場がスムーズに作業できるように段取りを行うことの重要さも感じていただけると思います。
=短い時間で生産してください 、、、ということを意味していると言えます。
生産管理が工程分析から理解すべきこと
アパレル生産管理とは、縫製工場がスムーズに生産できるように【段取りを組む】ということが主な仕事です。生産の流れを大まかにでも分かっていない人が、良い段取りを組むことができるでしょうか?残念ながら生産の流れを理解していない人は、縫製現場の時間の大切さも理解していないことが多く、トラブルの発生の際の対処も遅い傾向があるように思います。アパレル生産に多くのトラブルはつきものですが、出来得る限り工場は止めない。時間のロスはさせない。このマインドで仕事をすることで、応えてくれる工場さんは沢山あるはずです。
ファッションそのものには感性の部分があったり、クリエイティブな感覚は重要ですが、プロダクト現場に繋がるお仕事は、正確さや緻密さや計算、そして迅速な対応を重視しなければならないと思います。なかなかモノが売れないアパレル業界は厳しい時代ではありますが、改善できることはまだまだあると思います。
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