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アパレル未経験者が見落としがちな生産トラブル【縫製編】

アパレル未経験者が見落としがちな生産トラブル【縫製編】

日本のアパレル製品は非常に厳しい検品をクリアしているので、基本的に問題のある製品がユーザーの方まで届くことはあまり多くはありません。海外製品も品質が上がっていますが、多くは日系の検品会社の検品を通ったり、さらに日本で検品した製品が市場に流通しています。そのため、アパレル未経験者ではどのようなトラブルが起こっているのかを想定することは難しいのではないでしょうか。ここではアパレル未経験者が新規参入する際に見落としがちなトラブルを、縫製にポイントを置いて解説していきたいと思います。

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縫製工場で気をつけるべきポイント

要尺計算ミス

生地の要尺計算は通常はマスターパターンしかないような状態で見積もりを行わなければならないので、正確に行うのは非常に難しい。サイズ展開をすることによって、小さなサイズでも大きく要尺を削減することは難しいが、大きなサイズで身頃が横に3パターン並ぶ場合と2パターンしか並ばないという違いが出ると一気に要尺が掛かってしまうことがあります。特に要注意なアイテムが柄合わせが必要、しかも大きめのボーダーやチェックであるほど影響が出やすい。

地糸切れ

聞き慣れない言葉だと思いますが、縫製する際に生地の糸そのものを針によって切ってしまうことで生地に穴が空いてしまうトラブル。基本的には生地の厚みと針の太さが合っていないことが原因で起こります。縫製工場も多くのアパレル製品を生産してきているので、どれくらいの厚みの生地にどの太さの針で縫製するべきかということは把握しています。

特に見落とされがちなのが、乾燥した真冬に夏の非常に薄い素材の製品を生産するとき。天然の植物繊維は乾燥に弱く、水に濡れることでむしろ強度が増すという性質があります。冬の乾燥した空気の中で縫製すると、通常では縫製できる針(カットソー縫製用の針)で縫製したとしても地糸切れを起こしてしまうことがあります。工場をなるべく密閉して加湿器で湿度を上げて縫製することなど対処が必要になりますが、様々な対処をしていても起こることがあります。冬に夏服用アイテム、特に天然繊維100%で薄い生地を使用する時は注意して下さい。サンプル作成時とは寄稿的条件が全く違うのということを考えなければなりません。

後加工を考えた縫製糸の使用

 

通常の縫製用の糸は、強度やコストを考えてポリエステルの糸が使用されていることが多いです。しかし製品で染色加工を行う場合、ポリエステル糸では染まりません。製品での後染めの加工は綿100%の製品であることが基本です。ポリエステルは高温高圧で染める必要があるため、ポリエステルの糸で縫製をしてしまうと縫製糸のみが染まらないということになります。(染まらないことをデザインとする場合は別)そのため、縫製糸にも木綿の糸を使用することを指定しておかなければなりません。

*また木綿とポリエステル混紡であえて染まる部分と染まらない部分を分けるという手法もあります。

カットソーのウーリーテープ

カットソーの肩部分の伸びを防止したりするために使用する、ウーリーテープはナイロン製とポリエステル製があります。そして価格がやすく流通量も多いのでウーリーナイロンが使用されていることが多いです。(指定しなければ、だいたいの工場はウーリーナイロンを使用)淡色のナイロンは燃焼で発生する窒素酸化物(NOx)や紫外線の影響で黄変してしまう可能性があります。特に薄手のホワイトの生地を使用してウーリーナイロンテープを使用すると、黄変したテープが黄色く透けてしまうことで、トラブルになる場合があります。基本的にホワイトのウーリーテープに関しては、ポリエステルを指定しておいたほうが問題を防ぐことができます。

接着芯

圧着条件

縫製工場では圧着条件をあまり見ていない場合が多くい。また、工場の機械が古くて設定通りに稼働していないことなどもあるので注意が必要です。大抵の場合は隠れるからっという理由で疎かになってしまいがいちな部分。油断していると、降らしの見返しなどで発覚することがあります。そして接着条件と生地の相性にも落とし穴があります。ポリエステルや起毛素材など、熱の圧着で色が変色することがあるので注意が必要。この部分に関してはサンプルの段階で十分に確認しておかなければならない。

接着芯の要尺

接着芯をパーツの全面に接着する場合は、粗裁ちして接着芯を貼り付けたあとにパーツに裁断した方が圧倒的にキレイで効率が良い。さらには工場としては樹脂のはみ出しがなくて、圧着機のローラーが長持ちするという側面もある。ロスを抑えてギリギリの要尺で接着芯を手配すると不足することになるので、後で補充するカット代と運賃を考えると、余裕を持って手配するほうがトータルとして考えるとコストを抑えることにも繋がる。

詳しくは下貼り工程の記事もご覧下さい

異素材の組み合わせ

伸縮性の違い

異素材の縫製にはとにかくサンプル時点で十分に検討が必要。針の番手はとしては生地が厚い方に合わせざるを得ず、薄い生地側への負担がかかる。また伸縮性のある生地と伸びない生地の場合にもトラブルが起きやすい。着心地としては伸びない側に縫い目を固定され、伸縮性のある生地が強い場合は、縫製で伸ばしてしまうとギャザーのようになっていまう可能性がある。

色移り・色泣き

濃い色の生地と淡色の生地を縫い合わせることによって、色が淡色側に移ってしまう現象。サンプル生産の時点で検査を行って注意していることであっても、生産時の条件の違いで予想外のことが起こる可能性がある。ポロシャツの襟リブなどによく見られるライン入りのデザインなどでも、淡色の生地にポリエステルのライン色が汚染することがある。これは保管期間や条件によっても発生する場合としない場合があるので注意が必要。

その他

見落としがちというわけではありませんが、糸調子の狂いや縫い目飛びなども完全に解消することは難しい問題です。そこから起こるパッカリング、そしてチャコの印跡の残りといったイージーなミスは普段のやり取りの中で注意を促しておくのがいいでしょう。

縫製工場とのやり取り注意点

アパレル製品の場合、本生産の前にサンプルを何度か作ります。縫製に関するトラブルの場合は、多くの場合は未然に防げることがほとんどのはずです。しかし、スケジュールの遅れなどから縫製工場に無理をさせてしまったり、納期遅れの都合で縫製工場を変更したりすると、どうしても連絡しておくべきことが漏れていたり、不得意なアイテムを縫製してもらうことになったりと、トラブルの可能性が高まります。

また、スケジュールが遅れたことで裁断のみが終わっているものを別の工場に移すといったイレギュラーな事案も起こることがあります。その場合、元々の工場が生産しやすいように調整していたものが、別の工場ではやりにくいといったことも起こりえます。様々な調整をするのも生産管理ですが、本質は余計な調整をしないように前もって準備することが最も大切なことだと思います。

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  • この記事を書いた人

ni-no

長年アパレル業界で働いて、スーツ工場勤務から生産管理やカットソー縫製工場の責任者をしてきました。ノウハウの蓄積が少ないアパレル業界の仕事に関してまとめていきます。 【仕事】 ウェブサイト作成と運営 ウェブライティング アパレル製品企画 アパレルOEM生産 承っております。 お気軽にお問い合わせ下さい。 【趣味】 ボルダリング  頭と体を鍛える最強の趣味だと思ってます!!

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