ボタンダウンシャツから工程分析と立ちミシンのラインを解説
アパレル業界で仕事をしていても、アパレル生産管理であっても、座りミシン(バンドル方式)と立ちミシン(TSS方式)って一体どのように違うのか分からないという人がほとんどではないでしょうか。ここでは私が仕事をしていたカットソー縫製工場のラインを例にして、どのような仕組みとなっていたのか。そして生産ラインを図解することで、どのようなことを理解するとアパレル生産がスムーズに流れるのかを解説していきたいと思います。
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【TSS】トヨタソーイングシステム・立ちミシン方式とは
【TSS】トヨタソーイングシステム・立ちミシン方式とは、いわゆる自動車のTOYOTAの製造ラインが有名な「ジャスト・イン・タイム」という「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」準備して作業の中で余分なものを持たない、余分なものをつくらないことを基本にした生産の仕組みです。よく耳にするイメージとして「小ロット生産に向いている」「リードタイムが短い」「トラブルを発見し、対処しやすい」「スケジュール管理をしやすい」ということがよく言われてきました。
「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」
「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」という生産ラインには、確実な部品の供給が必要になります。この生産方式では投入から完成まで滞りのない流れが最も重要です。一着が完成までの時間が短いため、生産投入時には全ての資材が揃っていることが必要で、逆に資材が揃わなければ生産ラインに投入しないということになります。またアパレル製品はあらかじめ作っておく部分パーツがあるため、事前にパーツ作りを行って全て揃ってようやくスタートが可能となります。
リードタイムが短い
リードタイムとは本来発注から納品までの全ての時間を指していますが、このアパレルのTSSの場合は縫製ラインに投入されてから完了までの時間を指していることが多いです。座りミシンではパーツ縫製もラインの中ですが、立ちミシン方式はパーツ縫いはラインとは別という考え方になります。
立ちミシン方式ではそのため裁断したパーツをそのままラインに流せるTシャツやポロシャツならばすぐに生産ラインに入れられます。しかし衿や袖カフス・玉縁ポケットを作っておかなければなならいアイテムでは、ライン投入までの時間が大きく変わってきます。「TSSはリードタイムが短い」とよく言われますが、あくまで生産ラインへの投入から完成までの時間で判断されていることが多いからで、実際の生産時間が大きく変わるわけではありません。
トラブルを発見して対処しやすい
ジャストインタイムの方式で一番のメリットがこの「トラブル発見と対処」に関してではないかと思います。
TSSはラインの1着目の完成が早いため、即時に完成品のチェックができます。問題点が発見されれば、他の生産中の製品に対しては最小限の被害で対処することができます。その反面、座りミシン(バンドル方式)では1着が縫い上がったときには、他の製品もほとんどの工程が完了しています。そのため、トラブルが起こったときに「全てほどく」っという事態が起こりうるのです。
生産数管理のしやすさ
1日の生産数を把握できれば納期管理も行いやすくなります。TSSでは生産ラインを1日動かせば、そのラインで可能な生産数量がおよそ把握できます。部品の供給がスムーズでミシン台数、人員さえ同じであれば、特に大きな上下の変動は理屈の上ではありません。その上で、生産総量から日数を計算してアイロン仕上げ・梱包を計算すれば納期は割り出すことができます。ここから分かるように縫製ラインだけでは納期を短縮することは非常に難しいです。そもそものアパレル生産管理の重要さというものは、ラインに投入するまでの生地・資材・二次加工の戻りなどをしっかりと管理することの方が大切なのです。
ボタンダウンシャツの工程から立ちミシンの生産ラインを解説
鹿の子素材のニットボタンダウンシャツ
- 台衿付きシャツ
- 右身頃ヨーク1枚
- 袖丸縫い
- スリット二つ折り始末
- ブランドネームは台衿貫通
工程分析に関しては、立ちミシンでも座りミシンでも全く同じ工程数となります。要は立ちミシンは1着から数着ずつを1工程ごとに行い、座りミシンは同じ色・サイズのロットをまとめて全数を1工程完了して、次の工程に移るという生産方式の違いとなります。
ボタンダウンシャツの立ちミシン図解
このように立ちミシンのラインを組んだ時、1ラインで合計15台ものミシンが必要になります。単純に2ラインで同じ製品を流すためにはさらに同じ調整具合の15台のミシンが必要になります。
ライン投入前に必要な部品工程
おそらく自動車のなどの生産と違う部分は、部品も自分たちでスケジュール調整しながら作成しなければならないということ。部品のサプライチェーンがしっかりと構築されていて、それぞれが「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」の部品を供給してもらう生産体制とは事情が異なる。また、納期に大きく影響するのが刺繍やプリントなどの二次加工のスケジュール。裁断が終わっているのに、縫えるものがないという状況となり、非常に生産管理の頭を悩ませる部分です。
立ちミシンラインの工程解説
上の図は各ミシンで行う工程を図解したものです。工程は掛かる時間や、扱う部品にも合わせて分けられています。あくまでも生産の流れが滞らないように配置されています。なぜ同じ本縫いミシンが横に並んでいたり、ボタン付けミシンが2台必要なのかというと、ミシンに取り付けた定規やガイド、押さえ、ミシン糸の変更をすることなくスムーズに流れなければTSSの意味が無いからです。
デザイン変更があった場合のミシン配置の例
仮に生産直前に第1・第3のみボタンホールカラーの変更という修正があったとします。修正指示やデザイン画への反映は簡単なものです。これを立ちミシンの生産ラインに反映させてみます。
このように高価なボタンホールミシンがもう1台必要となり、工程数が増えて作業時間が長くなります。もし座りミシンの場合は、ミシン糸の付替えてボタンホールを2工程行うことになります。
生産ライン・縫製工程を理解することの重要性
アパレルの現場ではプロとして仕事をしている中でも、なぜこのデザインになると工程数が増えるのか?そして工賃が上がってしまうのかということを説明しても伝わらないということが非常に多いです。デザインや縫製仕様にこだわって服を作るというのは、ユーザーさんに良い服を届けるためには絶対に譲ってはいけない部分もあるのは間違いありません。しかし生産のことを理解しないまま、安易にしかも突然に変更がなされることも多く経験してきました。生産のラインを図解して見ることで、変更やトラブルなどで現場ではどのようなことが起こっているのかを、どのような対処が必要となっているのかを想像していただきたいと思います。
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